人間は一日中、自己以外のものに振り回されています。
周囲のできごと、人の言葉、指示に操られ、
それに対して発生する脳内の想念(マインド)に乗っ取られ、
身体の痛みやかゆみに気を取られ、
解決策を案じているうちに日が暮れて、
結局、何も変わらないまま一日を終えて行くのです。
その間、自己の主体は忘れ去られ、等閑にされ、
主体自身も外的状況に同一化して、己の存在は事実上なくなっています。
覚醒とは、忘れ去られている「自己」を取り戻すことです。
これには非常な忍耐と、努力、修練が必要です。
常に「自己」を想い起こし続けることは、
この世でも最も難しい、不可能に近い作業です。
しかし、これをやり遂げることが真のヒロイズムであり、
内部、外部の敵に打ち克ち続けることで、「自己」は取り戻されます。
この道に入ると、不思議なほど困難が立ち現れます。
人間関係を含めた外的環境は厳しくなり、
肉体的な苦痛は増します。
すべてが、あたかも「自己想起」を阻むかのように、
行く手に立ちはだかって来ます。
少し調子が出て「自己」に集中し始めると、
必ず誰かがやって来て話しかけたり、身体に痛みかゆみが発生したり、
外で騒音が起こるなど、とにかく邪魔が入ります。
しつこく想念が纏わりつくこともあります。
これらすべてをはねのけて、「自己」の中心へと向かうことは至難の業です。
ほとんどの人にとって、それはただ、不可能な作業です。
しかし、100%不可能ではないことが、この作業のポイントです。
たとえどんなに狭き門でも、駱駝が針の穴を通るほど難しくても、
1%でも可能性がある限り、トライする価値はあります。
あとはその人の信念、根気、意志、決意、実行あるのみです。